「ああ」
「餃子みたいなやつ」
「知ってるよ」
「肉汁凄いじゃん」
「あのレンゲに乗せて食べるやつでしょ」
「そうそう。そのまま食べると肉汁で口の中火傷するって脅された」
「うん」
「あれはムカついたな」
「なんで」
「好きに食わせろよ、て」
「でもレンゲで食べたんでしょ」
「そりゃ火傷は厭だからな」
「で、なんの話?小籠包うまかった、で終わらないよな」
「小籠包の肉汁てさ」
「うん」
「そのとき知ったんだけど、あれ肉汁のためになんか入れてるらしいんだ。あのゼリーみたいなアレ」
「ゼリー?」
「あの出汁のゼリー」
「煮凝り?」
「それ。そういうの入れて、わざわざ肉汁出してるんだって」
「そうなんだ。知らんかった」
「あれはムカついたな」
「なんでまた」
「だって肉汁って本来結果だろ」
「結果ってなんだよ」
「餃子とかの肉汁って、旨く作った結果として出るもんじゃん。良い肉使うとか」
「うん」
「それを人工的に出そうとするなんておかしくないか、と思うんですよ」
「あー」
「旨い結果として、いわば副産物としての本来の肉汁じゃないんですよアレは。肉汁が出れば旨い、ていうのは本来の姿を見失っているんですよ」
「でもうまかったんだろ」
「うまかった。ただおれは認めない。見失っている」
「でもうまかったんだろ」
「で、そこで終わらないんだこの話は」
「ん?」
「おれは小籠包に疑問を感じながら、ある感覚を思い出した」
「すげえ言い回しだな」
「、、、なんだと思う?」
「引っ張られてもそもそもこの話が見えてないから」
「ヒントは」
「いらないけど」
「汁、だ」
「いらないって」
「つまらん」
「話したいなら進めてくれ」
「、、、おれは小籠包を食べながら、前日観たAVのことを思い出した」
「食事中だろ?」
「ああ、しかも家族とだ」
「哀しくなるな」
「いや、エロいことじゃないから」
「そういうことじゃないだろ」
「そのAVは、潮吹きがフューチャーされていた」
「短絡的だな」
「なにが」
「肉汁で潮吹き。頭どうなってるんだ」
「似たようなもんだろ」
「あと未来じゃねえ」
「ん?」
「フィーチャーだから。フューチャーじゃない。」
「そういう細かい部分はいいんだよ」
「フューチャリングもおかしいからな。フィーチャリングだからな」
「しつこい。で、そのAVが、とにかく潮吹かせるやつだったの」
「ああ、あるね」
「女優に水分摂らせまくったりするんだけど」
「あれはもうエロとかじゃないだろ。びっくり人間みたいじゃん。アレは好きじゃない」
「同意。そのAV観たときの違和感が小籠包にあったんだよ」
「肉汁?」
「そう。潮吹きも結果じゃん。気持ちいい、イく、そのときの結果として、副産物としてのが潮じゃん」
「それを水分過多にして出させるのは、てことか」
「そういうこと」
「ちょっとわかるわ。小籠包よりわかる」
「そういうことを、思ったわけですよ」
「ただまあ」
「うん?」
「潮吹きが、気持ちいい結果としてのものかどうか」
「我々には、確かめる術がない、か」
「とりあえず、家族との食事中にAV思い出すのはやめとけ」
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