2016年04月20日

落書

「小籠包てあるじゃん」
「ああ」
「餃子みたいなやつ」
「知ってるよ」
「肉汁凄いじゃん」
「あのレンゲに乗せて食べるやつでしょ」
「そうそう。そのまま食べると肉汁で口の中火傷するって脅された」
「うん」
「あれはムカついたな」
「なんで」
「好きに食わせろよ、て」
「でもレンゲで食べたんでしょ」
「そりゃ火傷は厭だからな」
「で、なんの話?小籠包うまかった、で終わらないよな」
「小籠包の肉汁てさ」
「うん」
「そのとき知ったんだけど、あれ肉汁のためになんか入れてるらしいんだ。あのゼリーみたいなアレ」
「ゼリー?」
「あの出汁のゼリー」
「煮凝り?」
「それ。そういうの入れて、わざわざ肉汁出してるんだって」
「そうなんだ。知らんかった」
「あれはムカついたな」
「なんでまた」
「だって肉汁って本来結果だろ」
「結果ってなんだよ」
「餃子とかの肉汁って、旨く作った結果として出るもんじゃん。良い肉使うとか」
「うん」
「それを人工的に出そうとするなんておかしくないか、と思うんですよ」
「あー」
「旨い結果として、いわば副産物としての本来の肉汁じゃないんですよアレは。肉汁が出れば旨い、ていうのは本来の姿を見失っているんですよ」
「でもうまかったんだろ」
「うまかった。ただおれは認めない。見失っている」
「でもうまかったんだろ」
「で、そこで終わらないんだこの話は」
「ん?」
「おれは小籠包に疑問を感じながら、ある感覚を思い出した」
「すげえ言い回しだな」
「、、、なんだと思う?」
「引っ張られてもそもそもこの話が見えてないから」
「ヒントは」
「いらないけど」
「汁、だ」
「いらないって」
「つまらん」
「話したいなら進めてくれ」
「、、、おれは小籠包を食べながら、前日観たAVのことを思い出した」
「食事中だろ?」
「ああ、しかも家族とだ」
「哀しくなるな」
「いや、エロいことじゃないから」
「そういうことじゃないだろ」
「そのAVは、潮吹きがフューチャーされていた」
「短絡的だな」
「なにが」
「肉汁で潮吹き。頭どうなってるんだ」
「似たようなもんだろ」
「あと未来じゃねえ」
「ん?」
「フィーチャーだから。フューチャーじゃない。」
「そういう細かい部分はいいんだよ」
「フューチャリングもおかしいからな。フィーチャリングだからな」
「しつこい。で、そのAVが、とにかく潮吹かせるやつだったの」
「ああ、あるね」
「女優に水分摂らせまくったりするんだけど」
「あれはもうエロとかじゃないだろ。びっくり人間みたいじゃん。アレは好きじゃない」
「同意。そのAV観たときの違和感が小籠包にあったんだよ」
「肉汁?」
「そう。潮吹きも結果じゃん。気持ちいい、イく、そのときの結果として、副産物としてのが潮じゃん」
「それを水分過多にして出させるのは、てことか」
「そういうこと」
「ちょっとわかるわ。小籠包よりわかる」
「そういうことを、思ったわけですよ」
「ただまあ」
「うん?」
「潮吹きが、気持ちいい結果としてのものかどうか」
「我々には、確かめる術がない、か」
「とりあえず、家族との食事中にAV思い出すのはやめとけ」






posted by 淺越岳人 at 02:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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